2015-08-29 インディペンデント系映画の名作「バグダッドカフェ(ニューディレクターズカット版)」

ハリウッドのメジャースタジオ6社以外からの配給映画をインディペンデント系映画というらしいです(諸説あって、自主映画をそう呼ぶ場合もあるそうですが)。 最近では「フランス人は10着しか服を持たない」という本のなかにも「教養を身につける」というところで「インディペンデント系映画を観る」ことがでてきます。 インディペンデント系映画を観たら教養がつくかどうかはわかりませんが、「他人(ひと)とは違うことを知っている感」を味わえ、掘り出し物のいい映画が一杯あることは間違いないです。

今回は、インディペンデント系映画の名作である1987年に西ドイツで製作された映画「バグダッドカフェ」をご紹介します。

ひとに受け入れられるためには、まず自らひとを受け入れる

この「バグダッドカフェ」を観ると、ひとに対して優しい気持ちになれるので、自分のなかでひとに対して否定的な気持ちが芽生えてきている時など繰り返し観ている大好きな映画のひとつです。

タイトルが「バグダッドカフェ」なのでイラクの首都バグダッドの話と思いきや、アメリカのラスベガス近郊の砂漠にあるモーテルとガソリンスタンを併営しているカフェが舞台です。 このカフェで、人と人が時の流れとともに交流していく様が描かれています。 カフェ以外の場所での映像はほとんどありません。

ご主人と旅行中のドイツ人女性(ジャスミン)が、旅行の途中でご主人と喧嘩別れをしてしまい、ひとりで「バグダッドカフェ」へたどり着くところから物語がはじまります。

バグダッドカフェ」には変わり者が多く出入りしており、そこに突如現れたドイツ人女性のジャスミン。

最初、ジャスミンは奇奇の目で見られ、「バグダッドカフェ」の女主人であるブレンダからも疎まれます。 でも、ジャスミンはそのような境遇のなかでもこの変わり者達を一人ずつ受け入れていきます。 そうすると、今度はジャスミンが一人ずつから受け入れられていきます。 そして、最後にはブレンダとも・・・。

この映画のいいところのひとつは、登場人物のキャラがしっかり立っていることです。 たとえばジャスミンは、スマートな美人ではなく、太っていて、決して美人とはいいずらい(個人の好みですが)容姿で、主役っぽくありません。

また、女主人のブレンダもいい味を出しています。 小柄で華奢な体つきですが、常にヒステリックで周りに当たり散らしています。 常に怒りのオーラが出ており、まわりに対する怒りの表現、声のトーン、目つきなど「この人ほんとに怒っているんやないやろか」と思わせるほどです。

なかなかうまいキャスティングです。

映画の感想は人に寄って違うもので、ボクの女性友達は、この映画は「女同士の友情の物語だ」と言っていました。 ボク自身は、この映画を観ると、いつも「そうだよな。まず自分からひとを受け入れないとな」と考えさせられます。 映画の捉え方は人に寄って違う。 それでいいと思いますし、そうあるべきだと思います。 それが映画の幅でもあります。

また、この映画のサウンドトラックもすごくイイです。 ジェヴェッタ・スティールのテーマ曲「コーリング・ユー」は、アカデミー賞にもノミネートされ有名です。 歌詞の内容も映画のストーリーに沿った内容になっています。 これを聞くと、ジャスミンは喧嘩別れした旦那さんのことを想っているのかもと考えさせられます。

Information

公 開:1989年(日本) 製作国:西ドイツ、アメリカ 配 給:KUZUIエンタープライズ 監 督:パーシー・アドロン